ビジネスの現場で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、その意味を正確に理解しないまま使われているケースも少なくありません。
本記事ではDXの基本を整理しながら、その成功を左右する重要な要素である「UX(ユーザー体験)」に焦点を当てます。DXとUXの関係性を明らかにし、企業が成果を出すための実践ポイントを紹介します。
目次
DXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して既存の仕組みや業務をより良い形へと変革することを指します。
単なるIT化や効率化ではなくテクノロジーの進化を起点に新たな価値を創出し、ビジネスモデルそのものを変える取り組みです。ビジネスの現場では、AIやクラウドやデータ活用などの導入を通じて従来の業務構造や提供価値を根本から見直す動きが加速しています。
これにより、顧客体験の向上や市場競争力の強化といった成果が期待されています。つまり、DXは単に「システムを入れ替えること」ではなく「企業がデジタルを活かして変化に強い組織へ生まれ変わること」を意味します。
UXとは
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが商品やサービスを利用する中で得る体験全体を指します。単にデザインや操作性の良し悪しだけでなく購入前の期待から利用後の満足まで、あらゆる接点での感情や印象を含みます。
特にITサービスでは画面の見やすさや操作のしやすさに注目が集まりがちですが、実際のUXはオンラインとオフラインの両方を含むより広い概念です。たとえば問い合わせ対応や配送、アフターサポートといった要素も体験の一部として評価されます。
つまり、UXとは「ユーザーが企業との関わりを通じてどう感じるか」を捉えるものであり、顧客満足度やブランド価値を左右する重要な視点です。
DX推進においてUXの重要性が注目される理由
DXの市場は年々拡大しています。富士キメラ総研の日本国内の市場調査によると2019年度の国内DX市場は約7,912億円に達し、2030年度には約3兆425億円と、3.8倍に成長すると予測されています。こうした急成長の背景には、企業のデジタル化ニーズが多方面で高まっていることが挙げられます。特に次の3点が主要な要因です。
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ユーザー体験のデジタル化です。
ここ10年で、紙媒体からWeb媒体への移行が進み、あらゆる購買や情報収集の行動がオンライン上で完結するようになりました。
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コロナ禍によるオンライン化の加速です
2020年以降、非接触の需要が一気に高まり、企業は顧客との接点をデジタル上で再構築する必要に迫られました。
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人材不足に伴う業務効率化の必要性です。
日本では労働人口の減少が進む中、限られた人員で生産性を維持するために、デジタル技術を活用した自動化や省力化の動きが強まっています。
このように、社会全体がデジタル化へとシフトする中で、ユーザー体験(UX)を重視した設計がDX成功の鍵を握っています
UXデザインの重要性が高まっている理由
UXデザインの価値は年々高まっています。矢野経済研究所の調査によるとITサービス市場におけるUXの貢献額は2019年に約2.01兆円、2020年に約2.47兆円、2021年には約2.89兆円に達すると予測されました。
2017年から2021年にかけての年平均成長率は24.2%と高水準を維持しています。この背景には、ビジネス環境や消費者行動の変化が深く関係しています。特に、次の3つの要因がUXの重要性を押し上げています。
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商材の中心が「モノ」から「サービス」へ移行していることです。
従来の買い切り型商品から、サブスクリプションやアプリ課金などの継続利用型サービスへと支出が変化しています。
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UXがサービス品質の評価基準になっている点です。
デジタルサービスが生活の一部となった今、ユーザーは「どれだけ使いやすく、心地よい体験を得られるか」で価値を判断します。
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企業間競争の中でUXが差別化要素になっていることです
各社が体験価値を磨くことで優位性を確立しようとする結果、市場全体でUXへの投資が活発化しています。
このように、DXの推進が進む現在、UXは単なるデザイン要素ではなく、事業成功を左右する経営戦略の一部となっています。
UXを重視するメリット / 効果
ITサービスにおける「UX(ユーザー体験)」の良し悪しは、私たちが日常的に感じる使いやすさや満足度に直結します。たとえば「必要な情報をすぐに見つけられた」「ボタンや文字が見やすく操作がスムーズだった」「申し込みや購入まで迷わず進めた」といった体験は、すべて良質なUXの一例です。
では、こうした優れたUXを実現することで、企業にはどのような効果が生まれるのでしょうか。多くのサービスでは、ユーザーが以下のような段階を経ることで、ビジネス成果の向上につながります。
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サービスに触れる
ユーザーは日常生活の中で多様なWebサイトやアプリに触れます。
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より良い体験を実感する
使いやすさや情報の見やすさを通じて、ユーザーは快適な体験を積み重ねます。
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UXを起点に他者へ拡がる
満足度の高い体験は、口コミやレビューを通じて自然に拡散します。
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競争優位性が構築される
ポジティブな体験がブランド信頼を高め、他社には模倣しにくい価値として定着します。
このようにUXの改善は、顧客満足度の向上だけでなく、リピート率の向上や新規顧客の獲得、さらには市場での競争力強化にも直結します。
DXプロジェクト推進における注意点
DX(デジタルトランスフォーメーション)と混同されやすい概念として、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。デジタイゼーションは、既存の業務の一部をデジタル化することを指します。たとえば紙の書類を電子化したり、単一業務をITシステムで自動化したりする取り組みです。一方のデジタライゼーションは複数の業務プロセスをデジタル技術でつなぎ、新しい価値やビジネスモデルを生み出すことを意味します。
これらはいずれも業務の一部を効率化する取り組みですが、DXはより広い視点で企業全体の変革を目指します。単なる業務デジタル化にとどまらず、組織構造・企業文化・提供価値のすべてを見直し、デジタルを起点とした事業変革を実現するのがDXの本質です。
したがって、「話題のITツールを導入してみよう」「面倒な作業を自動化してみよう」といった発想だけでは十分ではありません。 本当に顧客や自社にとって解決すべき課題を明確にし、デジタルによる変革が最も効果を発揮する領域を見極めたうえで、プロジェクトを設計・推進することが求められます。

UXを重視したDX推進の成功事例
UXを中心に据えたDX推進の好例として、日本最大級の不動産メディア「RENOSY(リノシー)」を運営する株式会社GA technologiesの取り組みが挙げられます。同社は、紙の資料や契約書、電話・FAXが依然として多く利用される不動産業界において、デジタル技術を活用した抜本的な改革を実現しました。
特に注目されるのが、不動産投資ローンの申し込みや審査をオンライン化したSaaS型サービス「MORTGAGE GATEWAY by RENOSY」です。従来は書類をやり取りしながら進めていた煩雑なプロセスを削減し、ユーザーが迷わず手続きを完結できるUXを設計しました。その結果、取引全体がスムーズになり、顧客の満足度が大きく向上しました。
さらに、この取り組みはエンドユーザーだけでなく、取引先である不動産会社や金融機関にも効果をもたらしました。業務の効率化が進んだことで、業界全体のデジタル化が加速しています。GA technologiesの事例は、UXを起点としたDXが「顧客体験の質」と「業務効率」の双方を高められることを示す代表的な成功モデルと言えるでしょう。
UXを重視したプロジェクトを推進するためには
自社でUXを重視した事業開発プロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。
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社内 / プロジェクト内のUX人材育成
社内において、実際にUXを重視したコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。
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組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙
社内やプロジェクト内においてユーザー体験が軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得られず、プロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。
結論 / まとめ
DXが注目される一方で、真に成果を上げている企業はまだ多くありません。技術導入だけではなく、ユーザーの体験価値を中心に据えた改革こそが本質的なDXです。UXを重視したプロジェクトは、業務効率化や新しいビジネスモデルの創出だけでなく、顧客から「選ばれる理由」を生み出します。
つまり、DXを成功に導くためには、テクノロジーよりも先に「人の体験」を設計する視点が欠かせません。UXを起点にした変革こそが、持続的な成長への最短ルートです。
【今すぐにでもデザイン思考を重視したプロジェクトを推進したい場合は】
UXデザインコンサル会社 / Webコンサル会社へ業務を委託するというやり方が考えられます。
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