【不動産業界の担当者は必見！】不動産サービスのUXデザイン改善のポイントを解説

はじめに、本記事におけるキーワードである「不動産サービス」が具体的にどういったサービスを指しているかについて説明します。

本記事における「不動産サービス」は主に以下のようなサービスを指します。

• 購入/賃貸の不動産検索プラットフォーム（SUUMOなど）
• 契約手続きなどの簡素化サービス（イタンジなど）

人々が毎日を過ごす住まいを探し、スムーズにそこに住まうためにはこれらのサービスを駆使して複雑な手続きを簡単にすることが欠かせなくなっています。不動産業界はこれからもライフスタイルの多様化によりますます発展していくことが予見されており、次々と多くのサービスが生まれていくことでしょう。

不動産サービスにおいてUXデザインが重要だと言われる理由は以下の2点とされます。

• 検索・回遊時間が長い

  不動産に関わる契約は金額的にも大きな買い物になり、日々の暮らしにも大きな影響を与えるものなので多くの時間を費やす傾向にあります。それに伴ってサービス上でも、長期間にわたって検索をしたり、サイト内を回遊したりするユーザーも多くなります。その中で、サクサク使いやすい・一覧性が高くて見やすいといったことは非常に重要なポイントになります。

• 手続きが複雑

  不動産契約においては様々な法律や制約が関係し、その複雑さから実際の契約までを面倒に感じるユーザーが多い傾向にあります。ユーザーが大変だと思うということはすなわちユーザーの体験の負がそれだけ多いということを意味し、体験を改善することで得られる効果の余地がそれだけ広いということができます。

前述のように、不動産サービスにおいてはUXデザインの改善が大きな効果をうむことがわかります。その具体的なメリットは以下の2点とされます。

• 多くのユーザーに利用されて収益性が高まる

  優れたユーザー体験を構築することで、ユーザーがサービスをスムーズに利用することができるようになると競合他社の不動産サービスよりも自社サービスを使ってもらうことができます。結果、企業としては多くの利用ユーザーを集めることができ収益性が高まることに繋がります。

• サービス上で正しいコミュニケーションができコストが削減できる

  UXデザイン改善により、ユーザーがスムーズに検索やその後の契約手続きを行うことができるようになります。これにより、旧来の不動産業界で課題視された「手続きが複雑」「専門的な内容が分かりにくい」といった部分が改善され、結果的に事業運営のコストを削減することができます。

不動産サービスの分野において効果的なUX改善を行うために注意すべき点は主に以下の2点です。

• ユーザーの欲しい情報をレコメンドする

  前述のように、不動産は契約までのリードタイムが長く意思決定が重い商材です。したがって、ユーザーの回遊動向やニーズを捉えて、正しいレコメンドを実施することでその意思決定を円滑にし、ユーザーに貢献するとともに事業の観点でも購買や契約を促進することが重要になります。

• セキュリティ/情報管理の制約を重視する

  不動産にまつわる体験は、金額が高くなるだけでなくユーザーの個人情報、信用情報といった機密にも関係する傾向にあります。杜撰な管理をしてしまったり、ユーザーに対して情報が不透明であったりすることで致命的なトラブルが生じることも少なくありません。サービスそのものの品質や規約といったところの管理を重視することが求められます。

ここではアメリカの不動産情報プラットフォームである「Zillow」のUX改善の事例を紹介します。

• 背景

  Zillowは不動産情報プラットフォームで、住宅価格の推定値や物件の詳細情報を提供しています。不動産市場において、ユーザーが理想的な住宅を見つけ、不動産取引に関する情報に簡単にアクセスできることを後押しするサービスです。Zillowはユーザー増加を目指してユーザー体験の向上が必要であるとし改善を進めました。

• 施策

  • 予測分析ツールの導入

    機械学習アルゴリズムを使用した住宅価格の予測ツールを提供しました。これによりユーザーは特定のエリア・物件に関する価格の傾向を探り、将来の投資を計画する際に役立てることができるようになりました。

  • 3D仮想ツアーの提供

    物件の詳細な内部や外部をリアルな3Dツアーで見ることができる機能を導入しました。これによりユーザーは物件に物理的に足を運ばなくても、臨場感ある見学ができるようになりました。

  • ユーザーインターフェースの改善

    ウェブサイト・モバイルアプリともにユーザーが使いやすく細かいボタンや切り替え時のアクションなどを改善しました。ユーザーが迅速かつ直感的に物件情報を探しやすくなり、希望する条件に合致する物件を見つけるまでの時間が短縮されました。

• 効果

  3D仮想ツアーや予測分析ツールの導入により、ユーザーはより興味深く、参加感のある体験を得ることができ、サイトへの訪問頻度が増加しました。またユーザーインターフェースの改善により、物件検索が迅速かつ簡単になり、ユーザー満足度が向上し、Zillowは不動産市場での信頼性を高め、より多くのユーザーを集めることに成功しました。

自社でUXを重視した事業開発プロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。

• 社内 / プロジェクト内のUX人材育成

  社内において、実際にUXを重視したコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。

• 組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙

  社内やプロジェクト内においてユーザー体験が軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得ることができずプロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。

不動産関連サービスにおけるUX改善は、サービスを使いやすくし、効率的な意思決定やスムーズな契約を促進するためには不可欠であることを解説してきました。意識的なUX改善を続けていくことでユーザーが使いやすいサービスが生まれ、多くのユーザーのライフスタイルを良いものにすることを後押しすることができます。今一度、自社のサービスについても課題を見つけ、UXデザイン改善について議論してみてはいかがでしょうか？