IT技術の進化により、人々の行動やビジネスの前提が大きく変わりました。AIやDXに加えWeb3など新たな潮流も登場し、企業はこれまで以上に迅速な価値提供が求められています。
本記事では新規事業開発においてUXを軸に考える重要性と、顧客価値を起点としたプロダクトづくりの視点を解説します。
目次
事業開発とは
事業開発はまだ形になっていないアイデアから価値あるサービスをつくり、事業として成立させるプロセスです。 市場の課題を起点に仮説を立て、プロダクトを形にし収益化できる状態まで育てる役割を担うでしょう。
関わる領域は企画・開発・マーケティング・組織調整まで多岐にわたり、社内外のステークホルダーと連携しながら意思決定を進める力が求められます。スタートアップでは会社全体が0→1の状態にあり、大企業では新規事業部やCVCなど専門組織が設置されるケースが増えています。
よく混同される概念に「事業企画」があります。事業開発が0→1で事業を立ち上げる役割なのに対し、事業企画は既存事業を1→10へ拡大させるフェーズを担います。つまり、価値をつくるのが事業開発、磨き伸ばすのが事業企画です。
UXとは
UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略でユーザーが購買サービスの利用を通じて得る体験全体のことを意味します。
とりわけITサービスの画面の美しさや使いやすさなどの利用体験だけに焦点を当てて語られることが多いですが、実際はオンライン / オフライン問わずユーザーが得る体験についてはその全てを指します。
新規事業開発のプロセス
新規事業開発は、サービスが生まれる前から市場に浸透するまでを大きく3つのフェーズに分けて考えることができます。
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事業構想フェーズ
顧客の課題や市場性を踏まえ、どのようなビジネスモデルや提供価値を設計するかを検討します。市場規模や再現性を見極め、投資継続か撤退かを判断する重要な段階です。
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開発・改善フェーズ
構想をプロダクトとして形にし、最小限の機能で検証を進めます。ユーザーテストやインタビューを通じて顧客の反応を確認し、ニーズに合う形へと改善を繰り返します。
開運用・エンハンスフェーズ
リリース後は運用・保守を行いながら、ユーザーの利用データやフィードバックをもとに機能拡張やUX改善を続けます。継続的な価値提供と定着が求められる段階です。
新規事業開発においてUXの重要性が注目される理由
新規事業開発では、UXを重視することが成功確率を大きく左右します。その理由は主に「PMFの達成」と「競争優位の確立」という2つの観点にあります。
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PMF達成に直結するため
PMF(Product Market Fit)とはプロダクトが顧客に受け入れられ、継続的に使われている状態を指します。この段階ではNPS(Net Promoter Score)や口コミなどが重要な指標となり、利用者が「また使いたい」「他人に勧めたい」と感じているかが判断材料になります。
こうした評価を支えるのがUXです。 例として、以下のような体験が積み重なることで満足度は高まります。
必要な情報が迷わず見つかる
フォーム入力や購入までの流れがわかりやすい
画面のレイアウトやボタンサイズが直感的でストレスがない
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競争優位性の源泉になるため
デジタルサービスは模倣されやすく、機能や価格だけでは差別化が難しくなっています。その中で「使いやすい」「信頼できる」と感じてもらえる体験は、乗り換えの抑止力となり、継続利用やファン化につながります。
一度市場で優位なUXを築ければ、模倣しにくい差別化要素となり、他社との差を広げる好循環を生み出せます。
UXを重視するメリット / 効果
私たちは日常の中で、意識しないうちに「使いやすい」「スムーズに進められた」と感じるサービスに触れています。これがUXの良さによって生まれる体験です。
優れたUXは、単に便利というだけでなく、ビジネスの成果にもつながります。一般的には、次のような流れで価値が生まれると考えられています。
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サービスに触れる
ユーザーは日常の中でさまざまなWebサービスやアプリを利用します。
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よりよい体験を実感する
知りたい情報に迷わずたどり着ける、操作が直感的であるなど、小さな成功体験が積み重なります。
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UXを起点に他ユーザーへ拡がる
満足度が高まることで、口コミやレビュー、SNSなどを通じて自然に他者と共有されます。
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競争優位性が構築される
早期のユーザー支持や模倣されにくい価値として定着し、継続的で効率的な顧客獲得につながります。
新規事業開発を推進するにあたっての注意点
新規事業を成功に導くためにはアイデアだけでなく、顧客起点で検証と改善を繰り返す姿勢が欠かせません。その代表的な手法がリーンスタートアップです。
リーンスタートアップとは、必要最小限の機能を備えたプロトタイプ(MVP)を素早くつくり実際のユーザーから得られた声をもとに改善を重ねていくマネジメント手法です。限られた予算や時間の中でも学習と検証を高速で回せるため、多くのスタートアップや新規事業で採用されています。
一方で、現場では次のような失敗パターンも少なくありません。
- 顧客の声を聞かず、推測だけで進めてしまう
- 議論や理想の構想に時間を費やし、プロダクトを出さない
- 施策を実施しても振り返らず、学びを次に生かさない
こうした進め方では顧客の課題から乖離したまま開発が進み、時間もコストも浪費してしまいます。重要なのは顧客が本当に解決したい課題を見極め、その価値を最小単位でプロダクトとして実装し、実際の反応から学習することです。
リーンスタートアップはその「ムダ」を防ぎ、事業を正しく成長させるための考え方ともいえます。
UXを重視した事業開発の成功事例
UXを起点に新規事業を生み出した事例として、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の次世代型与信サービス「Rerep(リリップ)」が挙げられます。Rerepは年齢や年収などの従来型の属性情報ではなく、ユーザーの日々の行動やサービス内ミッションの達成状況をもとに信用スコアを形成する仕組みを採用しています。
スコアに応じてキャッシュバックが行われ、実質的な金利負担を下げられる点が特徴です。従来の与信サービスでは手続きが煩雑で、画一的な審査基準により金利や借入枠が決められていました。
Rerepはこの不満を解消し、ユーザーが「使いたい」と思える体験設計を追求することで、カスタマイズ性と満足度の高いサービスを実現しました。まさにUX視点が、ビジネスモデルの差別化と新たな価値創出につながった事例といえます。
UXを重視したプロジェクトを推進するためには
自社でUXを重視した事業開発プロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。
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効果社内 / プロジェクト内のUX人材育成
社内において、実際にUXを重視したコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。
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組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙
社内やプロジェクト内においてユーザー体験が軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得られず、プロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。
結論 / まとめ
情報が容易に手に入りビジネスモデルも模倣されやすい今の時代では、新規事業の参入ハードルが低く見える一方で、実際に事業として成立するケースは多くありません。だからこそ、成功率を高めるためには、最初にユーザーの理解を深め、その課題に対してどのような価値を提供できるのかを明確にすることが重要でしょう。
新規事業の立ち上げにおいて必要なのは、アイデアの斬新さではなく顧客の視点で何が本当に必要かを見極め、優先順位をつけて形にしていく姿勢です。徹底してユーザー起点でプロジェクトを俯瞰し、価値のある体験だけに集中することが、選ばれるサービスづくりの第一歩となります。
【今すぐにでもデザイン思考を重視したプロジェクトを推進したい場合は】
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